記憶1
昔連絡を取り合ってた人がいる。
いつの事だかもう覚えてないけど、ずっとアドレス帳に名前とメールアドレスだけが残ってる。
どうして知ったのかも思い出せなくて、ただ名前に懐かしさを感じる。
珍しい名字、なんて読むのか聞いた事がある。
でもなんて呼んでたかは覚えてない。
どうやっても思い出せなくて、昔のケータイを引っ張り出してみる。
充電器がないからやっぱりわからずじまい。
どんな話をしてたんだっけって気になるけど、全然思い出せない。
多分高校生のときだと思う。
実際に会って話したことはないけど、確かに覚えているのは楽しかったこと。
何故か信頼し合えていた気がする。
会ってみようって、そのときは思わなかったし今も会って何すんだって感じだけど。
ただそのときの僕はなんで彼女を知っていたのかすごく気になる。
たまに今何してるのかなって気になる、名前とメールアドレスしか知らない人。
もう大人になって、仕事して。
頭の片隅に染み付いた感覚がほんのたまに、思い出させる。
いつの間にか連絡を取らなくなった。
特に何かがあったわけではない、仲違いをした覚えもない。
たまに思い出しては頭を離れなくなる人。
顔も知らないけど夢に出てくる気がするんだ。
いつかちゃんと思い出せる日がくるのだろうかって、望んではいるけど。
無理だってこと、知ってる。
どんな人だったっけな。
元気でやってるといいけど。
遠い少年の頃の記憶。